現金払いのお店が増える理由とは?キャッシュレス決済の仕組みと店側の事情【池上彰】
「キャッシュレス決済が当たり前の時代なのに、どうして現金払いのお店が増えているの?」
最近、スーパーや飲食店で「お支払いは現金のみ」と書かれた張り紙を見かけ、不思議に思ったことはありませんか。
スマートフォンひとつで買い物ができる便利な時代に、あえて現金払いに戻すお店が出てきています。
実はその背景には、キャッシュレス決済の手数料負担、物価高による利益の圧迫、お店の経営を守るための判断があります。
2026年10月31日放送のテレビ朝日系『池上彰のニュースそうだったのか!!』でも、「現金払いの店が増えているのは誰の都合なのか」という身近なお金の問題がテーマとして紹介されました。
この記事では、現金払いのお店が増える理由から、キャッシュレス決済の仕組み、店舗の手数料、消費者への影響まで、具体的な数字を交えてわかりやすく解説します。
結論からいうと、現金払いへの回帰は、単なる時代遅れではなく、商品を安く売るための経営戦略でもあるのです。
現金払いのお店が増えているのはなぜ?池上彰の番組でも話題に
キャッシュレス全盛なのに現金払いへ戻すお店がある
クレジットカード、交通系ICカード、QRコード決済など、私たちの支払い方法は大きく変化しました。
しかし、その一方で、キャッシュレス決済をやめて現金払いに戻す店舗も現れています。
理由として特に大きいのが、店舗が決済会社に支払う手数料です。
消費者はクレジットカードやQRコード決済を利用すると、ポイントがもらえたり、財布を持ち歩かずに買い物ができたりします。
ところが、お店にとっては、キャッシュレス決済が利用されるたびに費用が発生する場合があります。
つまり、私たちが便利に感じているサービスの裏側で、店舗がコストを負担しているのです。
ただし、全国すべての業種で現金払い限定の店舗が増加していると断定できる統計は確認されていません。
一部店舗で「現金回帰」が起きている一方、国全体ではキャッシュレス決済の利用が拡大しています。
日本のキャッシュレス決済比率は58.0%
経済産業省が2026年3月31日に発表したデータによると、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%に達しました。
日本のキャッシュレス決済の推移】
| 項目 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 決済比率 | 52.5% | 58.0% |
| 決済金額 | 141.0兆円 | 162.7兆円 |
| 前年からの変化 | ― | 5.5ポイント増 |
※2024年の比率は2026年公表時点の改定後数値です。
出典:経済産業省・2025年のキャッシュレス決済比率、日本商工会議所
さらに、POSレジ事業者ポスタスの2026年9月の飲食店データでは、キャッシュレス決済比率が58.1%でした。
ただし、こちらは同社のPOSデータによる集計であり、経済産業省の全国指標とは調査対象が異なります。
このように、キャッシュレス決済が広がる流れと、一部店舗が現金払いに戻す動きは同時に起きているのです。
キャッシュレス決済の仕組みとは?店舗手数料が発生する理由
1,000円の買い物でも店には1,000円が残らない
例えば、あなたが飲食店で1,000円の食事をクレジットカードで支払ったとします。
消費者に請求される金額は1,000円ですが、お店に入金される金額は手数料分だけ少なくなる場合があります。
仮に手数料率が2.5%なら、25円が差し引かれる計算です。
【図解①:キャッシュレス決済のお金の流れ】
お客さんが1,000円をカード決済
↓
決済会社・決済ネットワークを通じて処理
↓
店舗側に決済手数料25円が発生
↓
店舗への入金額は975円
※手数料2.5%、その他の費用を除いた簡略例
決済会社は、決済ネットワークの運用、売上管理、セキュリティ対策などのサービスを提供しています。
その対価として、お店が加盟店手数料を負担する仕組みです。
実際にはカード発行会社や加盟店契約会社など複数の事業者が関係し、手数料や入金方法は契約ごとに異なります。
詳しい基本の仕組みは、消費者庁の公式動画でも学べます。
▶ YouTube:キャッシュレス決済の種類と仕組みを理解しよう(消費者庁)
店舗が負担する手数料はどれくらい?
キャッシュレス決済の手数料は、サービスや契約条件によって違います。
例えば、決済サービス「Square」では、条件を満たす事業者向けの対面カード決済手数料が2.5%、電子マネー・QRコード決済の手数料が3.25%と案内されています。
【月100万円を決済した場合の手数料比較】
| 決済方法・条件 | 手数料率 | 月100万円の負担 |
|---|---|---|
| 現金払い | 0% | 0円 |
| 対面カード決済(対象事業者) | 2.5% | 25,000円 |
| 電子マネー・QRコード決済 | 3.25% | 32,500円 |
※Squareの公表料金をもとにした試算です。カード決済の2.5%には中小企業の定義や年間キャッシュレス取引額などの適用条件があります。現金の0円は加盟店決済手数料のみを指し、銀行への入金費用などは含みません。
月100万円のキャッシュレス売上に3.25%の手数料が発生すると、年間では39万円になります。
売上が増えれば、それに比例して手数料負担も大きくなるのです。
現金払いに戻すお店がある3つの理由
理由① 手数料が利益を圧迫している
キャッシュレス決済の手数料は数%程度ですが、利益率が低い店舗にとっては無視できません。
例えば、1,000円の商品を売って、仕入れや人件費などを差し引いた利益が50円だったとします。
そこから3%の決済手数料が発生すると、利益は20円になってしまいます。
【手数料3%が店舗の利益に与える影響】
商品の販売価格:1,000円
↓
仕入れ・人件費など:950円
↓
手数料を引く前の利益:50円
↓
キャッシュレス手数料:30円
↓
最終的な利益:20円
利益が60%減少する計算
※説明用の仮定であり、実際の原価構成や税金などは店舗によって異なります。
売上の3%という数字が小さく見えても、利益に対する影響はずっと大きいのです。
帝国データバンクが2026年4月に公表した調査では、小売業約8,000社の売上高に対する支払手数料の割合が、2014年度の1.41%から2024年度の2.04%へ上昇していました。
10年間で約45%の増加です。
なお、この支払手数料にはキャッシュレス決済以外の出店手数料なども含まれますが、店舗のコスト負担が重くなっていることを示しています。
理由② 商品価格を安くしてお客さんに還元したい
実際に、キャッシュレス決済をやめたスーパーがあります。
宮城県仙台市の「生鮮館むらぬし」は、2025年4月から現金払いのみへ変更しました。
テレビ朝日の報道によると、変更前は年間約2,000万円の決済手数料が発生していました。
同店では、そのコストを削減して商品を安く販売する戦略を採用しています。
2025年12月のテレビ朝日の取材では、卵1パック100円などの特売も紹介されました。
「ポイント還元よりも、その場で商品を安く買える方がうれしい」という消費者にとって、現金払い限定の店舗は魅力的な選択肢になります。
もちろん、手数料が減った分だけすべての商品が安くなるとは限りません。
それでも、現金払いへの変更が価格競争力につながるケースがあるのです。
理由③ 入金の遅れや決済管理の負担を減らしたい
小規模な飲食店では、仕入れ代金や家賃などを日々支払う必要があります。
現金払いなら売上金をすぐに手元で利用できますが、キャッシュレス決済では契約によって入金まで日数がかかる場合があります。
こうした現金の出入りを管理することを「資金繰り」と呼びます。
また、複数の決済サービスを導入すると、入金明細の確認や返金処理、スタッフへの操作説明も必要です。
ただし、現金払いにも釣り銭の準備やレジ締め、防犯、両替費用などの負担があります。
大切なのは、決済手数料だけでなく、店舗全体の運営コストで比較することです。
現金払いが多いお店では、キャッシュトレーを用意すると紙幣や硬貨の受け渡しを整理しやすくなります。
店舗用キャッシュトレー
現金の受け渡しをスムーズにしたい小規模店舗やイベント出店に向いています。

現金払いのお店に対するSNSの反応や口コミは?
「不便だから行かない」というキャッシュレス派
現金払い限定の店舗については、SNSでもさまざまな意見が見られます。
2026年8月11日のオトナンサーの記事では、現金のみの店舗を避けるという声や、キャッシュレスの会計の速さを評価する声が紹介されました。
キャッシュレス派にとってのメリットは、財布から小銭を探す手間がなく、利用履歴が自動的に記録され、ポイントも獲得できることです。
普段からスマートフォンだけで外出する人には、現金払い限定のお店が不便に感じられるでしょう。
「安くなるなら現金でいい」という現金派
一方、現金払いを支持する意見もあります。
特に、通信障害時にも利用できることや、手元のお金を確認しながら使えることを評価する人がいます。
現金の方が支出を把握しやすいと感じる人にとっては、使い過ぎを防ぐ助けにもなります。
また、商品の値段が安いなら現金払いでも構わないという考え方もあります。
どちらにもメリットがあるため、支払い方法の好みは人によって異なります。
重要なのは、現金派かキャッシュレス派かという二者択一ではなく、買い物の目的に合わせて使い分けることです。
現金払いとキャッシュレスはどう使い分けるべき?
消費者が損をしないための4つのポイント
1.現金払い限定のお店か事前に確認する
店舗の入口やレジ付近、公式サイトなどで利用できる支払い方法を確認しましょう。
2.ポイント還元と商品価格を比較する
例えば、1,000円の商品を買う場合、キャッシュレスのポイント還元率が1%なら10円相当です。
現金払い限定の店舗で同じ商品が970円なら、ポイントを考慮しても現金払いの方がお得になる計算です。
ただし、ポイントの利用条件や期間限定特典も確認する必要があります。
3.緊急時に備えて少額の現金を持つ
停電、通信障害、スマートフォンの電池切れなどでキャッシュレス決済が利用できない場合があります。
無理のない範囲で紙幣や硬貨を持っておくと安心です。
4.キャッシュレスの利用履歴も確認する
カードの利用明細や決済アプリを定期的に確認すれば、家計の管理や不正利用の早期発見にも役立ちます。
【自分に合った支払い方法の選び方】
商品を買う
↓
現金払い限定のお店?
├ はい → 現金を準備する
└ いいえ → 価格や特典を比較する
↓
ポイント還元を含めてお得なのは?
├ 現金 → 現金払いを選択
└ キャッシュレス → カード・QR決済などを選択
↓
便利さ・安全性・家計管理も考えて決定
現金も持ち歩きたいけれど、大きな財布は使いたくない人には、薄型のミニ財布が便利です。
薄型ミニ財布・コインケース
紙幣や小銭をコンパクトに収納でき、キャッシュレス中心の生活でも現金払いに対応しやすくなります。

店舗はキャッシュレス決済をやめた方がいい?
手数料を削減する前に確認したいこと
キャッシュレス決済をやめれば、必ず利益が増えるわけではありません。
現金しか使えなくなることで、キャッシュレス派のお客さんが来店しなくなる可能性もあるからです。
店舗の経営者が支払い方法を見直す場合は、次の順番で検討するとわかりやすくなります。
- 月間のキャッシュレス決済売上を確認する。
- 決済方法ごとの手数料を計算する。
- 端末代、月額費用、入金日を比較する。
- 現金管理にかかる費用と人件費を把握する。
- お客さんの利便性と売上への影響を踏まえて判断する。
例えば、QRコード決済だけをやめてカード決済は残すという方法もあります。
実際、テレビ朝日が2025年11月に報じた群馬県の飲食店では、電子マネーなどの取り扱いを見直し、月約15万円の利益改善につながったと紹介されています。
売上と費用の管理には、毎日の現金収支を記録することも役立ちます。
金銭出納帳・現金管理ノート
小規模店舗の売上、仕入れ代金、経費などを手書きで管理したい人に向いています。

現金払いの店は今後さらに増える?2027年以降を予測
今後の日本では、キャッシュレス化そのものは引き続き進むと考えられます。
経済産業省は2030年までにキャッシュレス決済比率65%、将来的には80%を目指す方針を掲げています。
一方で、物価高や人件費の上昇が続けば、少額決済の多い飲食店や低価格スーパーでは、決済手数料の削減を重視する可能性があります。
そのため、2027年以降は次のような動きが考えられます。
- 大手チェーンではキャッシュレス対応がさらに普及する。
- 小規模店舗では採算に合わせて決済方法を絞る。
- 決済会社間の競争によって、店舗向けの低手数料プランが広がる可能性がある。
- 現金とキャッシュレスを併用する店舗が引き続き重要な役割を担う。
ただし、これらは現在の状況から考えられる見通しであり、確定した未来ではありません。
店舗数の増減は、今後の手数料や景気、消費者の行動によって変わるでしょう。
現金払いのお店についてよくある質問
Q.現金払いの方がお店は儲かる?
キャッシュレスの加盟店手数料を削減できるため、利益が増える場合があります。
ただし、現金管理費用や来店客数の減少も考慮する必要があります。
Q.QRコード決済はお店にとって無料ではないの?
無料キャンペーンや一部の契約条件を除き、店舗に決済手数料が発生するサービスがあります。
導入時だけでなく、キャンペーン終了後の料金も確認することが重要です。
Q.現金払いにすると商品は安くなる?
必ず安くなるわけではありません。
ただし、手数料削減分を価格やセールに還元している実例はあります。
Q.キャッシュレス決済は危険なの?
キャッシュレス決済には利便性がある一方、フィッシング詐欺や不正利用などへの注意が必要です。
公式アプリを利用し、本人認証を設定することが大切です。
詳しい利用上の注意点は、金融経済教育推進機構の動画でも解説されています。
▶ YouTube:キャッシュレス決済(金融経済教育推進機構・J-FLEC)
まとめ|現金払いのお店が増える理由は手数料と経営判断にあった
2026年10月31日放送の『池上彰のニュースそうだったのか!!』でも取り上げられた、現金払いのお店が増えているという話題。
その背景には、消費者からは見えにくい店舗側の事情があります。
特に大きいのは、キャッシュレス決済の加盟店手数料、資金繰り、店舗運営の効率化といった問題です。
キャッシュレス決済は消費者に便利な反面、お店にとってはコストがかかる場合があります。
そして、その負担を減らすことで商品価格を抑えようとする店舗も実際に存在しています。
一方で、キャッシュレス決済そのものは全国的に普及を続けており、現金払いへの回帰が日本全体の主流になったわけではありません。
私たち消費者にとって大切なのは、現金払いとキャッシュレス決済のどちらか一方にこだわらないことです。
商品価格、ポイント還元、使いやすさ、緊急時の安心感を比較し、状況に合った支払い方法を選びましょう。
現金払いにもキャッシュレスにも、それぞれのメリットがあります。
いつもの買い物でお店の支払い方法を確認し、その裏側にある仕組みまで知ることが、賢いお金の使い方への第一歩です。


