「最近、人の名前がすぐに出てこない」
「買い物に行ったのに、何を買うのか忘れてしまった」
「親が同じ話を何度もするようになった」
――こうした変化があると、「もしかして認知症では?」と不安になる人も多いでしょう。
しかし、物忘れが増えたからといって、すぐに認知症と決まるわけではありません。
年齢を重ねれば、思い出すまでに時間がかかったり、名前が出にくくなったりすることは珍しくありません。
一方で、認知症になる前の段階として注目されているのが、MCI(Mild Cognitive Impairment=軽度認知障害)です。
厚生労働省は、MCIについて「認知症そのものではないが、健常な状態でもない」と説明しており、認知症と正常な認知機能の中間に位置する状態と考えられています。
NHK「きょうの健康」の「認知症新時代『MCIで早期発見 進行を緩やかに』」でも、このMCIに早い段階で気づくことの重要性が取り上げられました。
さらに現在は、生活習慣への働きかけだけでなく、アルツハイマー病によるMCIや軽度認知症に対して、病気の進行を緩やかにすることを目的とした新しいタイプの治療薬も登場しています。
「認知症になってから考える」のではなく、MCIなどの早い段階で原因を調べ、必要な対策や治療につなげる時代になりつつあるというのが、今回の重要なポイントです。
この記事では、MCIとは何なのか、普通の物忘れとどう違うのか、どんなサインに注意したいのか、何科を受診すればよいのか、さらにレカネマブやドナネマブといった新しい治療薬まで、初心者にも分かりやすく解説します。
なお、この記事は一般的な医療情報をまとめたもので、MCIや認知症を自己診断するためのものではありません。
気になる症状がある場合には、かかりつけ医やもの忘れ外来などの医療機関へ相談してください。
- きょうの健康「MCIで早期発見 進行を緩やかに」のポイント
- MCI(軽度認知障害)とは?認知症との大きな違い
- 加齢による物忘れとMCI・認知症はどう違う?
- MCIに早く気づくためのサインは?本人と家族が見たいポイント
- MCIかもしれないと思ったら何科へ行けばいい?
- 認知症治療は「新時代」へ|レカネマブとドナネマブとは?
- レケンビとケサンラの違いを比較
- 新薬はどれくらい効く?「進行を緩やかにする」の意味
- 新薬で注意したいARIAとは?
- MCIでは薬以外に何をすればいい?
- MCIの最新情報を動画で学びたい人へ
- 家族の物忘れが増えたとき、どう声をかける?
- MCIについてよくある質問
- 生活を整えるサービスを選ぶときのポイント
- まとめ|MCIを怖がるのではなく「早く気づける時代」になった
きょうの健康「MCIで早期発見 進行を緩やかに」のポイント
今回のテーマで最も大切なのは、「物忘れ=すぐ認知症」でもなければ、「まだ生活できているから大丈夫」とも限らないという点です。
認知機能の変化には段階があり、認知症と診断されるほど日常生活に支障はないものの、以前と比べて記憶力や判断力などが低下している状態がMCIです。
国立長寿医療研究センターも、MCIを認知症と健常な状態の「中間のような状態」と説明しています。
ここで大切なのは、MCIは認知症そのものではないということです。
その後もMCIの状態が続く人もいれば、認知症へ進行する人もおり、反対に認知機能が正常域へ戻るケースもあります。
そのため、「MCIと分かったらもう手遅れ」と考える必要はありません。
むしろ、原因や背景を調べたり、生活習慣病を管理したり、運動や栄養、社会参加などを見直したりする機会になることに意味があります。
さらに現在は、アルツハイマー病によるMCIや軽度認知症の一部の患者について、抗アミロイドβ抗体薬という新しい治療の選択肢もあります。
これが「認知症新時代」と呼ばれる大きな理由の一つです。
認知機能の変化をシンプルに見ると

MCIは「認知症確定」という意味ではなく、今後の変化を注意してみていく必要がある段階と理解すると分かりやすいでしょう。
MCI(軽度認知障害)とは?認知症との大きな違い
MCIとは「Mild Cognitive Impairment」の略で、日本語では「軽度認知障害」と呼ばれます。
記憶、注意、言語、判断、計画など何らかの認知機能が以前より低下しているものの、日常生活の自立が大きく損なわれていないことが重要な特徴です。
たとえば、最近予定を忘れることが増えたものの、自分で買い物へ行き、お金を管理し、薬を飲み、食事を準備して生活できている場合には、認知症とは異なる段階である可能性があります。
反対に、認知機能の低下によって服薬管理や金銭管理、買い物などを一人で行うことが難しくなってくると、認知症を検討するうえで重要な情報になります。
日本老年医学会も、買い物や金銭管理などの手段的日常生活動作の変化が、認知機能障害を疑う手がかりになるとしています。
ただし、MCIは一つの病気の名前というよりも、認知機能の状態を表す言葉だと考えたほうが理解しやすいでしょう。
その原因がアルツハイマー病の場合もあれば、脳血管疾患など別の背景が関係している場合もあります。
また、睡眠不足、うつ状態、甲状腺機能の異常、薬の影響などによって認知機能が低下して見えるケースもあるため、原因を医学的に評価することが大切です。
「MCIらしいからアルツハイマー病だ」と自己判断してはいけないのは、このためです。
加齢による物忘れとMCI・認知症はどう違う?
「鍵をどこに置いたか分からない」「俳優の名前が出てこない」といった経験は、年齢を重ねれば誰にでも起こり得ます。
そのため、一回の物忘れだけでMCIや認知症と判断することはできません。
ポイントになるのは、以前と比べて変化があるか、その変化が繰り返されているか、生活に影響が出始めているかです。
たとえば、「昨日の夕食で何を食べたのか思い出せない」というのは、出来事の一部を忘れている状態です。
一方で、「夕食を食べたこと自体を思い出せず、また夕食を要求する」といった変化が繰り返される場合には、単なる加齢による物忘れとは異なる可能性があります。
ただし、この例だけでも診断はできません。
実際の診断では、物忘れだけでなく、注意力、判断力、言語能力、段取りを組む力なども含めて総合的に評価します。
加齢による物忘れ・MCI・認知症の違い
| 比較ポイント | 加齢による物忘れ | MCI | 認知症 |
|---|---|---|---|
| 認知機能 | 年齢相応の変化 | 一部で明らかな低下 | 複数領域で低下することがある |
| 日常生活 | おおむね問題なし | おおむね自立 | 支障が生じる |
| 約束・予定 | 時々忘れる | 忘れる頻度が以前より増えることがある | 管理が難しくなることがある |
| 金銭・服薬管理 | 基本的に可能 | ミスが増える場合がある | 援助が必要になる場合がある |
| 本人の自覚 | 気づいていることが多い | 気づいている場合も多い | 自覚が乏しい場合もある |
| 医療相談 | 変化が続くなら相談 | 一度相談したい | 医療機関での評価が重要 |
この表はあくまで一般的な傾向であり、一つ当てはまったからMCI、三つ当てはまったから認知症、というチェックリストではありません。
認知機能検査も同様で、点数だけで診断することはできません。
日本老年医学会は、HDS-R、MMSE、MoCAなどの検査について、スクリーニングには利用できるものの、検査結果だけでMCI・認知症を診断することは困難だとしています。
MCIに早く気づくためのサインは?本人と家族が見たいポイント
MCIに早く気づくために最も大切なのは、「何歳だからこのくらい普通」と一律に判断するのではなく、その人自身の以前の状態と比べることです。
たとえば、長年きちんと予定を管理していた人が、最近になって約束を何度も忘れるようになった場合には、一度注意して経過を見たほうがよいでしょう。
料理が得意だった人が手順を間違えることが増えた、いつも利用していた交通機関で迷うようになった、支払いのミスが急に増えた、同じ質問を短時間に何度もするようになった、といった変化も重要な情報になります。
また、「物忘れ」ばかりが注目されますが、認知機能には記憶以外にも多くの領域があります。
複数の作業を同時に行えなくなったり、段取りに時間がかかるようになったり、言いたい単語が極端に出にくくなったりする場合もあります。
家族が気づいた場合には、「認知症なんじゃないの?」と本人を問い詰めるより、具体的な変化を記録しておくほうが役立ちます。
たとえば「9月ごろから同じ支払いを2回することが3回あった」というように、いつ・どんな場面で・何が起きたのかを書いておくと、医療機関での問診にも利用できます。
SNSやネット上では「物忘れが一つでもあればMCIなのでは」と不安になりやすいのですが、一つの症状だけで判断するのではなく、生活全体の変化を見ることが重要です。
「ちょっと気になる」と思ったときの流れ

早期受診の目的は「認知症という診断を早く付けること」だけではなく、治療可能な別の原因を見逃さず、その人に必要な対策を早く始めることでもあります。
MCIかもしれないと思ったら何科へ行けばいい?
物忘れが気になる場合、「認知症専門病院へ直接行かなければならない」と考える必要はありません。
まず、普段から健康状態を知っているかかりつけ医がいれば、そこで相談する方法があります。
必要に応じて、もの忘れ外来、脳神経内科、老年内科、精神科などの専門医療へ紹介してもらえます。
厚生労働省は、認知症について不安がある場合の相談先として、地域包括支援センターや認知症疾患医療センターなども案内しています。
医療機関では、まず本人や家族から症状の経過を詳しく聞き取ります。
そのうえでHDS-R、MMSE、MoCAなどの認知機能検査を行ったり、必要に応じて血液検査や脳のCT、MRIなどを行ったりします。
ここで重要なのは、物忘れの背景にある別の病気を確認することです。
日本老年医学会は、認知症やMCIの評価では、うつやせん妄を除外したり、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症など、治療可能な原因を見逃さないために血液検査やCT・MRIなどを行う必要があると説明しています。
したがって、インターネット上の「認知症チェック」で点数が高かったとしても、それだけで認知症と決めつける必要はありません。
反対に、ネット上のテストで問題がなかったからといって、強い違和感が続いているのに受診を避けるのもおすすめできません。
点数よりも「最近明らかに変わった」という本人・家族の感覚が、相談を始めるきっかけになります。
認知症治療は「新時代」へ|レカネマブとドナネマブとは?
近年の認知症医療で大きな変化となったのが、アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬の登場です。
2026年9月時点、日本ではレカネマブ(商品名レケンビ)とドナネマブ(商品名ケサンラ)が、アルツハイマー病によるMCIおよび軽度認知症の進行抑制を目的として使われています。
アルツハイマー病では、アミロイドβと呼ばれるたんぱく質が脳内に異常に蓄積することが病態の一つとして知られています。
レカネマブとドナネマブは、このアミロイドβを標的にする抗体薬です。
しかし、ここで非常に大切な注意点があります。
MCIと診断されれば、誰でもレケンビやケサンラを使えるわけではありません。
PMDAの添付文書では、両薬とも、アミロイドPETや脳脊髄液検査などによってアミロイドβ病理を示す所見が確認され、アルツハイマー病と診断された患者に使用するとされています。
つまり、「最近忘れっぽい」「MCIといわれた」というだけでは、薬の対象になるとは限りません。
さらに、無症状でアミロイドβの蓄積だけが確認された人や、中等度以降まで進行したアルツハイマー型認知症の患者については、これらの薬を新たに開始する対象にはなっていません。
新しい薬が使われるまでのイメージ

この過程を見ても分かるように、新薬治療は「物忘れ外来へ行ったらすぐ点滴」というものではありません。
専門的な検査と安全性評価を行ったうえで、本人と家族が効果とリスクを理解し、医師と相談して治療を選択します。
レケンビとケサンラの違いを比較
レカネマブとドナネマブは、どちらもアミロイドβを標的とする薬ですが、投与方法や治療設計には違いがあります。
レカネマブとドナネマブの主な違い
| 項目 | レカネマブ(レケンビ) | ドナネマブ(ケサンラ) |
|---|---|---|
| 対象 | アルツハイマー病によるMCI・軽度認知症 | アルツハイマー病によるMCI・軽度認知症 |
| 目的 | 病気の進行抑制 | 病気の進行抑制 |
| 標的 | アミロイドβ | アミロイドβ |
| 点滴投与 | 原則2週間に1回 | 原則4週間に1回 |
| 投与量 | 10mg/kg | 350mgから段階的に増量し1400mg |
| アミロイド確認 | 投与前に必要 | 投与前に必要 |
| MRIによる安全確認 | 必要 | 必要 |
| 主な重要リスク | ARIA・脳出血など | ARIA・脳出血など |
| 「治る薬」か | いいえ | いいえ |
現在のレケンビ点滴静注の添付文書では、通常10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注するとされています。
現在のケサンラでは、初回350mg、2回目700mg、3回目1050mg、その後1400mgを4週間隔で投与する方法が記載されています。
また、ドナネマブでは投与中にアミロイドβプラークの除去が確認された場合に治療を完了するという考え方が採られており、アミロイドPETによる評価は投与開始後12か月を目安としています。
ただし、投与頻度だけを見て「どちらが優れている」と判断することはできません。
臨床試験の対象者、評価方法、治療期間などが異なるため、試験で示された「何%進行を遅らせた」という数字を単純に横並びにして薬の優劣を決めることも適切ではありません。
新薬はどれくらい効く?「進行を緩やかにする」の意味
新薬について最も誤解しやすいのが、「認知症を治せる薬ができた」という受け止め方です。
レカネマブもドナネマブも、すでに失われた記憶を元通りにしたり、アルツハイマー病を完全に治癒させたりする薬ではありません。
実際にPMDAの添付文書にも、両薬について「疾患の進行を完全に停止、又は疾患を治癒させるものではない」と明記されています。
レカネマブの国際共同第3相試験「Clarity AD」では、早期アルツハイマー病の患者を対象に18か月間治療し、認知機能と日常生活機能を組み合わせたCDR-SBという指標の悪化量が、レカネマブ群1.21点、プラセボ群1.66点となりました。
つまり、治療を受けた人でも一定の進行はみられましたが、平均するとプラセボ群より進行が緩やかだったという結果です。
ドナネマブの第3相「TRAILBLAZER-ALZ 2」でも、早期症候性アルツハイマー病の患者を対象とした76週間の試験で臨床的な進行を遅らせる結果が示されています。
ただし、これらは集団全体の平均値です。
「この薬を使えば認知症になる時期が必ず○年間遅れる」と個人単位で保証できる数字ではありません。
効果の現れ方には個人差があり、安全性や通院負担なども含めて治療を判断する必要があります。
だからこそ「早ければ全員が薬を使う」ではなく、「早く気づくことで、治療を含む選択肢を検討できる」ことが新時代の本質だと考えるとよいでしょう。
新薬で注意したいARIAとは?
レカネマブやドナネマブについて知るうえで、効果と同じくらい重要なのが「ARIA」です。
ARIAとは「Amyloid-Related Imaging Abnormalities」の略で、日本語ではアミロイド関連画像異常と呼ばれます。
代表的なものに、脳のむくみなどが画像上でみられるARIA-Eと、微小出血や脳表ヘモジデリン沈着などがみられるARIA-Hがあります。
ARIAは無症状でMRI検査によって見つかる場合もありますが、症状を伴うこともあります。
レケンビの最新添付文書では、頭痛、錯乱、めまい、視覚障害、吐き気、歩行障害、けいれん、言語障害、筋力低下などがARIAを示唆する症状として挙げられています。
そのため、治療開始前だけでなく治療中にもMRI検査が必要です。
2026年9月改訂のレケンビ添付文書では、ARIAが治療開始から14週間以内に多いとして特に注意することや、症状がなくても治療初期を中心に複数回MRIを実施することが記載されています。
ケサンラについても、ARIAや脳出血が重要な副作用として扱われています。
また、2026年の添付文書では、APOE ε4を二つ持つ「ホモ接合型」の人でARIAの発現割合が高かったことから、治療開始前にAPOE遺伝子検査の実施を考慮することも記されています。
「新薬がある=気軽に使える」という治療ではなく、専門医療機関で継続的に安全性を管理しながら行う治療なのです。
MCIでは薬以外に何をすればいい?
MCIが注目されるもう一つの理由は、薬以外にも取り組めることがあるからです。
国立長寿医療研究センターでは、運動、栄養、認知トレーニング、生活習慣病の管理などを組み合わせた「多因子介入」の研究が続けられています。
日本で行われたJ-MINT研究では、65~85歳のMCI高齢者531人を対象に、生活習慣病管理、運動、栄養指導、認知トレーニングを組み合わせた18か月の介入が検討されました。
この研究では主要評価項目全体では統計学的有意差が認められなかった一方、その後の解析では、血圧や血糖、脂質の管理が十分でない人などで、多因子介入が認知機能の維持に役立つ可能性が報告されています。
そのため、「この運動を毎日10分すれば絶対に認知症にならない」といった単純な話ではありません。
重要なのは、運動だけ、脳トレだけ、サプリだけに頼るのではなく、血圧・血糖などの管理、身体活動、食生活、社会との交流などを総合的に整えることです。
毎日の食事作りが負担なら「続けられる方法」を考える
食生活を整えたいと思っていても、毎日献立を考え、買い物へ行き、料理を続けることが負担になる場合があります。
特に一人暮らしの場合や、離れて暮らす親の食生活が心配な場合には、「毎食きちんと自炊しなければならない」と考えすぎる必要はありません。
冷凍宅配食などを一部の食事に取り入れ、調理や買い物の負担を軽くする方法もあります。
ただし、宅配食はMCIや認知症を治療・予防するサービスではありません。
あくまで、毎日の食事を無理なく続けるための選択肢として考えてください。
買い物・調理の負担を減らしたい人に「タイヘイの宅配弁当」
「毎日メニューを考えるのが大変」「冷凍庫に食事を常備しておきたい」という場合には、宅配食を利用する方法があります。
タイヘイは、冷凍弁当・健康食を自宅まで届けてもらえる宅配サービスです。
必要なときに温めて食べられるため、自炊だけに頼らず食事を用意したい人や、離れて暮らす家族の食生活をサポートしたい場合にも検討しやすいでしょう。
最新のメニュー・価格・配送エリアは公式サイトで確認してください。
タイヘイ以外も比較して選びたい場合
宅配食は、価格だけでなく、1食あたりの量、メニュー、冷凍庫のスペース、配送頻度なども比較したいところです。
→ 高齢の家族にも使いやすい宅配食を比較|タイヘイ・ワタミ・noshの違い
運動は「無理なく続けられる方法」を選ぶ
普段ほとんど運動をしていない人であれば、いきなり激しいトレーニングを始める必要はありません。
体調や持病に配慮しながら、無理のない散歩などから始める方法があります。
高血圧や糖尿病がある人なら、薬を自己判断でやめず、主治医と相談しながら適切な治療を続けることも大切です。
一方で、「外へ運動しに行くのは続かない」「近くに通いやすい教室がない」という人もいるでしょう。
その場合は、自宅で参加できるオンラインフィットネスという選択肢もあります。
自宅で運動習慣を作りたい人にはSOELUという選択肢も
SOELUは、自宅から利用できるオンラインヨガ・フィットネスサービスです。
移動時間が必要ないため、「外出するほどではないけれど、自宅で体を動かす時間を作りたい」という人に向いています。
ただし、体調や持病によって適した運動内容は異なります。
特に持病がある場合や運動中に不安がある場合は、無理をせず医師などへ相談してください。
また、SOELUの利用によってMCIや認知症が改善・予防できるという意味ではありません。
運動を生活に取り入れるための一つの手段として検討してください。
外出すること自体を生活習慣にしたい人は、近所を散歩する方法や、通いやすいジムを利用する方法もあります。
→ 60代・70代から始めやすい運動習慣|散歩・自宅運動・ジムを比較
人と話す機会が減っている場合には、趣味の集まりや地域活動、家族との交流などを生活に取り戻すことも選択肢になります。
睡眠や難聴などについても、自分だけで「年齢のせい」と片付けず、必要に応じて医療機関へ相談するとよいでしょう。
MCIへの対応は、認知機能だけを見るのではなく、脳を含めた全身の健康や日々の暮らしを整えることが大切です。
MCIの最新情報を動画で学びたい人へ
文章だけでは分かりにくいという人には、自治体や公的医療機関が公開している解説動画も参考になります。
八尾市公式チャンネルでは2026年8月、国立長寿医療研究センターの専門家による「MCIって何?上手につき合う方法とは」をテーマとした講演会を公開しており、MCIや認知症について解説されています。
また、東京都健康長寿医療センター公式チャンネルでは、認知症の基礎からレカネマブ、アミロイドPETまで解説した公開講座を見ることができます。
動画を見る場合も、「これを見れば自己診断できる」と考えるのではなく、理解を深めたり医師へ相談するときの参考資料として利用するのがおすすめです。
家族の物忘れが増えたとき、どう声をかける?
家族が先に変化に気づくケースもありますが、伝え方には配慮が必要です。
本人に向かって突然「認知症でしょ」「最近おかしいよ」と言えば、不安や反発を強めてしまう可能性があります。
「最近、忘れることが増えて心配だから、一度一緒に健康チェックを受けてみない?」という形で、認知症の判定を受けさせるのではなく、健康状態を確認するために受診するという伝え方もあります。
本人が「自分は大丈夫」と話していても、家族が具体的な変化を感じている場合は、受診時にその情報が役立ちます。
「何となくおかしい」という表現だけでなく、「先月から薬を飲み忘れることが週に3回ほどある」「同じ公共料金を2回払った」など、具体的に記録しておきましょう。
診察では本人の話だけでなく、家族や介護者からの情報が重要になることがあります。
日本老年医学会も、認知機能の評価では介護者から情報を聴取することの重要性を示しています。
一方で、本人ができていることまで家族が先回りして奪ってしまう必要はありません。
MCIの段階では日常生活の自立が保たれている人も多いため、できることを続けながら必要な部分だけ支えることが大切です。
離れて暮らしている親が心配な場合はどうする?
親と同居していない場合、「毎日電話するのは難しいけれど、普段通り生活しているか少し気になる」というケースもあるでしょう。
まず大切なのは、本人と定期的に連絡を取り、必要に応じて近くの家族や地域の支援機関とも協力することです。
そのうえで、本人が希望する場合には、スマートホーム機器を生活の補助として利用する方法もあります。
たとえば、玄関の開閉や部屋の動きをセンサーで確認できる環境を作れば、離れて暮らす家族が日常生活の様子を確認する一つの手がかりになります。
ただし、本人に黙って監視するのではなく、導入前に本人と相談し、プライバシーに十分配慮することが重要です。
また、一般的なスマートホーム製品は医療機器でも緊急通報サービスでもありません。
異常の診断や安全を保証するものではない点にも注意してください。
離れて暮らす家族の生活サポートにSwitchBot
SwitchBotは、さまざまな家電やセンサーを組み合わせてスマートホーム環境を作れるサービスです。
開閉センサーや人感センサーなどを活用すれば、本人の同意を得たうえで、離れて暮らす家族の生活をサポートする仕組みを検討できます。
「毎日監視する」のではなく、「本人の自立を尊重しながら、必要なときに気づきやすくする補助」として使うことがポイントです。
→ 離れて暮らす高齢の親を見守る方法|カメラ・開閉センサー・人感センサーの違い
MCIについてよくある質問
MCIになったら必ず認知症になりますか?
いいえ、MCI=将来必ず認知症になるという意味ではありません。
MCIのまま推移する人もいれば、正常な認知機能の範囲へ戻る人もいます。
国立長寿医療研究センターも、MCIは運動や食生活などの対策を行うことで健常な状態へ戻ることがあると説明しています。
ただし、認知症へ進行する可能性もあるため、放置するのではなく経過をみることが大切です。
MCIは「治る」のですか?
原因や経過によって異なるため、一概に「治る」「治らない」とは言えません。
認知機能が改善して正常域へ戻るケースはありますが、アルツハイマー病など進行性の病気が背景にある場合もあります。
そのため、まず原因を評価することが重要です。
物忘れがあるだけで病院へ行ってもいい?
もちろん構いません。
厚生労働省も、「もしかして認知症では」と思われる症状に気づいた場合には、一人で悩まず相談するよう案内しています。
受診した結果「年齢相応だった」と分かることにも意味があります。
MCIは何科で診てもらえますか?
まずはかかりつけ医へ相談して問題ありません。
地域によっては、もの忘れ外来、脳神経内科、老年内科、精神科、認知症疾患医療センターなどで詳しい検査を受けられます。
どこへ行けばよいか分からない場合には、地域包括支援センターへ相談する方法もあります。
レケンビやケサンラはMCIなら使えますか?
MCIというだけでは使えません。
アルツハイマー病によるMCIまたは軽度認知症であることに加え、アミロイドPET、脳脊髄液検査などによってアミロイドβ病理を示す所見が確認されている必要があります。
MRI所見やほかの病気、使用中の薬などについても評価したうえで、専門医が適否を判断します。
新薬を使えば認知症は治りますか?
現在の抗アミロイドβ抗体薬は、認知症を完全に治癒させる薬ではありません。
PMDAの添付文書でも、レカネマブとドナネマブはいずれも「疾患の進行を完全に停止、又は疾患を治癒させるものではない」とされています。
目的は、適切な患者に使用することで病気の進行を緩やかにすることです。
家族が受診を嫌がる場合はどうすればいい?
最初から「認知症検査へ行こう」と迫るより、「血圧や薬も含めて一度健康状態を確認しよう」と、かかりつけ医への相談から始める方法があります。
家族だけで悩んでいる場合には、地域包括支援センターなどへ本人抜きで相談できる場合もあります。
生活を整えるサービスを選ぶときのポイント
MCIについて調べたことをきっかけに、「今後の生活も少し見直しておこう」と考える人もいるでしょう。
ただし、有料サービスを無理に利用する必要はありません。
散歩、自炊、家族との連絡など、お金をかけずにできる方法もたくさんあります。
一方で、「毎日の料理が負担」「外出して運動するのが続かない」「離れて暮らす親の様子が少し心配」といった具体的な困りごとがある場合には、民間サービスを上手に利用することで家族全体の負担を軽くできる場合があります。
【この記事で紹介したサービス】
| 困りごと | 選択肢 | サービス例 |
|---|---|---|
| 買い物・料理の負担 | 冷凍宅配食 | タイヘイ |
| 自宅で体を動かしたい | オンラインフィットネス | SOELU |
| 離れて暮らす家族の生活が気になる | スマートホーム機器 | SwitchBot |
いずれもMCIや認知症を治療・予防するための商品・サービスではありません。
医療に関する相談と、生活を便利にするサービスは分けて考えることが重要です。
まとめ|MCIを怖がるのではなく「早く気づける時代」になった
「最近、物忘れが増えた」と感じたとき、誰でも認知症への不安を覚えるものです。
しかし、物忘れがあるだけで認知症と決まるわけではありません。
一方で、「年だから仕方ない」とすべてを片付けてしまうのも適切ではありません。
認知症と健常な認知機能の中間にあたるMCIという段階があり、早い時期に気づくことで、原因を調べたり、生活習慣を見直したり、必要に応じて治療を検討したりできます。
MCIは認知症そのものではなく、すべての人がそのまま認知症へ進むわけでもありません。
そしてアルツハイマー病によるMCIや軽度認知症の一部では、レカネマブやドナネマブという、病気の進行を緩やかにすることを目的とした新しい治療薬も選択肢となりました。
ただし、これらは認知症を完全に治す薬ではなく、MCIであれば誰でも使える薬でもありません。
専門的な検査によるアルツハイマー病の確認と、MRIを含めた厳格な安全管理が必要です。
だからこそ今、大切なのは「認知症になったらどうしよう」と一人で恐れることではなく、以前との違いに気づいたら、早めに相談して原因を確かめることです。
本人も家族も「まだ病院へ行くほどではない」と考えがちな時期こそ、かかりつけ医やもの忘れ外来などへ相談する意味があります。
そのうえで、食事づくり、運動、家族との連絡など、日常生活で負担になっている部分があれば、無理なく続けられる方法を考えていきましょう。
認知症医療は、「症状がかなり進んでから対応する時代」から、MCIなどの早い段階で気づき、できることを一つずつ選ぶ時代へ変わりつつあります。
